児童教育実践に
ついての研究助成

第14回(2019年度)

第14回助成対象一覧(研究助成期間:2019年4月-2020年3月)

  • 第14回「児童教育実践についての研究助成」は、全国からいただいた160件のご応募の中から、下記の研究を助成いたします。
  • 研究助成期間終了後は、各研究の成果をホームページで公開する予定です。
助成対象研究(代表)者 (50音順、敬称略) 研究タイトル(※グループ研究) 研究内容
助成対象研究(代表)者
研究タイトル(※グループ研究)
赤木 和重(あかぎ かずしげ)
神戸大学人間発達環境学研究科 准教授
なぜ特別支援学級・学校の在籍児は急増しているのか?:排除としての「途中転籍」に注目して ※
朝岡 寛史(あさおか ひろし)
筑波大学人間系 特任助教
自閉スペクトラム症児における移動動詞「行く/来る」の指導法開発と教育実践への適用に関する研究
入山 満恵子(いりやま まいこ)
新潟大学教育学部 准教授
ナラティブを用いた学習言語の評価と指導法の開発:思考・学習のための言語習得に躓いている子どもの早期発見と支援のために ※
岡 檀(おか まゆみ)
統計数理研究所医療健康データ科学研究センター 特任助教
「統計的思考」の有無が児童の社会スキルおよび内面的資質に及ぼす影響―言葉の選択と解釈に焦点を当てて
片山 佳代子(かたやま かよこ)
神奈川県立がんセンター臨床研究所がん予防・情報学部 主任研究員
小中学校における効果的ながん教育実践に向けた教育支援教材並びにプラットフォームの開発研究 ※
小泉 健輔(こいずみ けんすけ)
高崎健康福祉大学人間発達学部 助教
メタファー思考の育成に焦点を当てた教材開発とその実践:算数科と国語科とを教科横断的に関連付ける視点から ※
神山  典子(こうやま のりこ)
岐阜市立加納中学校 教諭
ディスレクシアのある児童生徒のことばを聴く力のアセスメントアプリ"みみより"の開発
後藤 崇志(ごとう たかゆき)
滋賀県立大学人間文化学部 助教
多様な文化環境の中で学ぶ意欲を高める枠組みの構築 ※
高橋 智子(たかはし ともこ)
筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻共生教育分野 大学院生
小学生に対するいじめ防止のためのピア・サポートプログラムの効果の検証―中学校移行への継続的な支援を目指して―
高松 美紀(たかまつ みき)
東京都立国際高等学校 指導教諭
俳句を中心とした伝統的な言語文化の教科横断的・文化横断的な授業実践開発に関する研究 ―主体的な言語文化の担い手となる児童・生徒の育成を目指して― ※
谷本 薫彦(たにもと くにひこ)
岡山県津山市立津山西中学校 教諭
TiPSシート+タイムラプスで学習の振り返りをつぶやきから文脈へと導く研究 ※
徳竹 圭太郎(とくたけ けいたろう)
東京工業大学環境社会理工学院社会人間科学コース 大学院生
生徒の学習行動の可視化による教師向け協調学習支援システムの開発と実践 ※
中石 ゆうこ(なかいし ゆうこ)
県立広島大学総合教育センター 助教
外国につながる児童にとって難しい語をいかに説明するか―教室ですぐに使えるレファレンスの開発
中尾 尊洋(なかお たかひろ)
鳥取大学附属中学校 教諭
知識の「やりくり」による思考力育成授業の開発 ※
成田 潤也(なりた じゅんや)
厚木市立厚木第二小学校 教諭
機械翻訳を介しての外国語と国語の横断的学習に関する研究
荷方 邦夫(にかた くにお)
金沢美術工芸大学美術工芸学部一般教育等 准教授
読み手の知識を反映した改訂版リーディングスキル・テストの開発 ※
丹羽 さがの(にわ さがの)
東京家政学院大学現代生活学部児童学科 准教授
対話的実践が児童の学力に与える影響~低学年における対話的実践の効果の検討~ ※
服部 裕一郎(はっとり ゆういちろう)
高知大学教育研究部人文社会科学系教育学部門 講師
批判的思考力の育成を目指す算数授業の開発とその実践
平林 ルミ(ひらばやし るみ)
東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野 特任助教
ききとり困難のある子どものための評価と支援が連続した評価手法の開発 ※
藤澤 文(ふじさわ あや)
鎌倉女子大学児童学部 准教授
「考え議論する」道徳授業モデルの提案ー学校(道徳授業)・大学(教員養成)・教育委員会(教員研修)を対象として
松原 未季(まつばら みき)
奈良教育大学次世代教員養成センター 特任講師
幼稚園3年間における幼児の社会的調整の発達:幼児の他児の対人葛藤に対する介入行動の発達に着目して
宮坂 まみ(みやさか まみ)
環太平洋大学短期大学部人間発達学科子ども教育専攻 講師
児童が抑制の能力を発揮し得る条件を探る:ADHD傾向との関連
米本 和弘(よねもと かずひろ)
東京医科歯科大学統合国際機構 助教
日本語と日本語話者の多様性に対する小学生の理解育成のための実践モデル構築

(所属・役職は助成決定時のもの)
(※はグループ研究)

審査総評

2019年度「児童教育実践についての研究助成」は、全国より160件と、2006年度に本助成事業がはじまって以来もっとも多くの応募をいただきました。深く感謝申し上げます。
本年度は、初めて応募された方が多く、また、大学・研究機関に所属する研究者の方だけでなく、小学校や中学校に所属する教育実践に携わる先生方からの応募も増えました。全体として研究計画の立て方、計画内容の書き方の質もあがってきており、いずれも充実した申請書となっておりました。その中から、審査委員会において、本年度は23件の助成を採択いたしました。
研究内容としては、現代社会の新たな課題に焦点を当てたもの、既存の課題への新しい手法でのアプローチ、支援ニーズの高い外国語児童や障害のある子どもに対する教育実践などが多く見られました。一方、児童・生徒の成長の礎となる「ことばの教育」に真正面から挑む研究や、日常的な授業実践の場で積み上げていくような地道な研究は応募・採択ともに少なく、更なる取り組みを期待しています。
また、インパクトのある問題や課題に焦点を当てたときに、重要な研究でも、対象となる子どもや保護者、学校の側に立った視点が欠けている場合があることも気になりました。採択された課題も十分な配慮をもって研究を進めて頂き、その成果が社会に還元され、教育実践の質の向上に繋がっていくことを願っております。

審査委員長 本郷 一夫(東北大学大学院 教授)

なぜ特別支援学級・学校の在籍児は急増しているのか?:排除としての「途中転籍」に注目して ※

赤木 和重(あかぎ かずしげ)

神戸大学人間発達環境学研究科 准教授

本研究の目的は,インクルーシブ教育を進展させるうえでの阻害要因と考えられる小学校時期における途中転籍の児童数の推移およびその理由を実証的に明らかにすることである。そのために,小学校時期における途中転籍者の動態分析を行う。具体的には,通常学級・特別支援学級・特別支援学校間の異動数について,年度ごとの数を把握する。加えて,実際に途中転籍した児童の保護者に対して面接調査を行い,途中転籍原因とその背景にある問題を明らかにする。 目指す研究成果の1つは,転籍数や転籍率,年度ごとの推移を定量的な知見として提示することである。もう1つは,保護者からの面接調査結果を提示する。具体的には,転籍の背景には,従来指摘されてきた障害理解の深まりではなく,現在の通常学級に不満を抱えていることが多数を占めるかどうかを検討する。

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自閉スペクトラム症児における移動動詞「行く/来る」の指導法開発と教育実践への適用に関する研究

朝岡 寛史(あさおか ひろし)

筑波大学人間系 特任助教

自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder; ASD) 児は、「行く/来る」や「売る/買う」等のことばの理解や表出に苦手さを示すとされる。その理由として、他者の視点を取得すること (perspective-taking)、つまり自分と他者から見たときでは状況が異なるという理解が困難であるためと考えられている。本研究では、視点取得の"困難"と捉えるのではなく、その特性を"活用"することを試みる。具体的には、会話時における二者の空間的位置関係 (対面または横並び)、他者が提示するジェスチャー (例えば、身体の内側に向かって大きく腕や手を動かす) を変数とした事例研究を実施する。これらのアプローチにより、教育実践につながるASD児における「行く/来る」の指導法を開発することが目的である (研究1)。そして、その成果を社会に発信することが本研究の最終的な目的である (研究2)。

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ナラティブを用いた学習言語の評価と指導法の開発:思考・学習のための言語習得に躓いている子どもの早期発見と支援のために ※

入山 満恵子(いりやま まいこ)

新潟大学教育学部 准教授

目的;思考や学習のための言語を学習言語と呼ぶが、その一つであるナラティブ(語り)とは、現象や経験などをことばで再現する営みである。今回、学習言語の習得に躓きがあり、通級教室を利用している小1、2年生にナラティブを用いて言語を指導する新しい方法(NBLI: Narrative-based Language Intervention)を開発する。 方法:20の通級教室に協力を得、対象児や指導者を確保し、対象児(約60名)をNBLIか、従来の言語指導のいずれかのグループに無作為に割付け、一定期間指導後、言語能力における2群間の効果の違いを比較検証する。 目指す研究成果:数量的な結果のみならず、個々の子どものプロフィールに照らし合わせ、NBLIの有効性と限界を検証した上で、実用化に取り組みたい。

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「統計的思考」の有無が児童の社会スキルおよび内面的資質に及ぼす影響―言葉の選択と解釈に焦点を当てて

岡 檀(おか まゆみ)

本研究の目的は、児童の「統計的思考」が社会スキルのみならず、内面的資質の形成にも影響をあたえるという仮説をふまえ、統計や言語学の研究者らと共に検証することにある。 応募者は自身の先行研究から、自殺希少地域住民の視野が広く偏りが小さいことに着眼し、同地域児童を対象とするコホートスタディを開始した。「統計的思考」を持つ児童と持たない児童を比較した結果、自己肯定感をはじめとする資質に差異がある可能性が示唆された。同時に、「統計的思考」は言葉の選択と解釈とも関わりがあると観察された。 本研究では、統計学、言語学、児童心理学など領域の研究者らと意見交換を重ね、「統計的思考」の新たな抽出を試みる。最終的な到達目標は、児童に対する統計教育プログラムを構築し、想定外の諸現象に対処できる基礎力を育むことにある。

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小中学校における効果的ながん教育実践に向けた教育支援教材並びにプラットフォームの開発研究 ※

片山 佳代子(かたやま かよこ)

神奈川県立がんセンター臨床研究所がん予防・情報学部 主任研究員

これまで医療と教育の連携を模索しながら、がん教育のあり方が議論されてきたが、学校教育では保健体育科で扱う健康教育の中で、がんを教えるという位置づけが決まり、学習指導要領の改訂をもって小学校では平成32年度、中学校33年度からがん教育の全面実施が始まる。しかし、保健体育科教員の不安感や負担感は払拭されていない。その原因は教員らが、がんを生物学的、遺伝的、更には社会的、心理的な側面から理解し、そして教えなければならないと、誤解していることも一因である。がんという疾患を通して、命の大切さや、生きる喜び感じる、生きていくための力を養うための教材としても「がん」を扱うために教員支援教材、情報提供プラットフォームを構築し、がん教育の質の向上を目指し、がん死亡率の減少に貢献できるがん教育を支援する。

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メタファー思考の育成に焦点を当てた教材開発とその実践:算数科と国語科とを教科横断的に関連付ける視点から ※

小泉 健輔(こいずみ けんすけ)

高崎健康福祉大学人間発達学部 助教

本研究の目的は,メタファー思考の育成に焦点を当てた教材について,算数科と国語科とを教科横断的に関連付ける視点から開発し,複数の授業実践を通して,その有効性と課題について事例的に明らかにすることである. 本研究では,汎用的な資質・能力の育成のためにメタファー思考という視点に着目している.そして,メタファーを活用する行為を解釈すると,その根底には異なる二つの世界を対比的に捉えそれらが互いに影響を与え合うという特徴が含まれることから,特定の教科に閉じず,教科等横断的な学習として位置付けることを試みている.研究成果としては,メタファー思考に焦点を当てたときに算数科と国語科とをどのように関連付けることが可能であり,それをどのように具体化できるかについて,授業実践に基づいて具体的に示すことが期待できる.

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ディスレクシアのある児童生徒のことばを聴く力のアセスメントアプリ"みみより"の開発

神山 典子(こうやま のりこ)

岐阜市立加納中学校 教諭

ディスレクシアは文字の読みの困難さをさす。ディスレクシアの子どもの支援に重要なのは、ことばを聞き取って理解する力の活用、いわば"聴く"支援である。しかし、教師や支援者における"聴く"支援の重要性の認識は低い。教師や支援者が"聴く"支援の必要性に気づくためには、"自分では読めないけれども誰かに読んでもらえば理解できる"という、子どもの特性をはっきりと示すツールが必要である。そこで本研究では、聴く力のアセスメントツール"みみより"を開発する。"みみより"は教師が簡単に実施でき、また子どもにも取り組みやすいよう、タブレット端末を使用する。本研究の成果は、ディスレクシアのある子が「これならわかる!できる!」と学習に取り組めるための、ことばの支援の普及に大きく寄与すると考える。

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多様な文化環境の中で学ぶ意欲を高める枠組みの構築 ※

後藤 崇志(ごとう たかゆき)

滋賀県立大学人間文化学部 助教

全ての人が公正かつ質の高い教育を受けられることは、グローバル化と技術革新によって常に変化を続ける現代社会において実現すべき重要な目標として掲げられる。しかし実態としては、子どもの置かれている文化的環境の違いが、学ぶ意欲の低下を介して、高度な教育を受けることを妨げている可能性が指摘される。本研究の目的は、多様な文化的環境に置かれた子どもに対して、学ぶ意欲を育むことができる教育実践を持続的に提供する枠組みを構築することである。1)多様な文化的環境を持った場と連携した実践開発、2)教育実践を普及し、持続的に運営するための基盤構築の2つを通じて、文化的環境の違いに起因する教育格差の是正に寄与することを目指す。

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小学生に対するいじめ防止のためのピア・サポートプログラムの効果の検証―中学校移行への継続的な支援を目指して―

高橋 智子(たかはし ともこ)

筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻共生教育分野 大学院生

本研究は,増加の一途を辿るいじめ問題に対して,「予防」という観点から学校における心理教育プログラムの推進を図るため,小学校5・6年生を中心とした,小・中一貫のピア・サポートプログラムを実施し,その効果を明らかにすることである。これまで小・中学校での一貫した継続的プログラムの導入・実践に関する検討はほとんどなされておらず,プログラムの実施前のアセスメントについても課題があるとされる。そこで,本研究においては,対象のアセスメントからプログラムの作成,さらに発達的視点を考慮し,小・中学生対象の一貫したいじめ防止に効果的なプログラムの開発をめざすものである。効果が実証された小・中一貫のプログラムが開発,導入されることによって,学校教育において喫緊の課題であるいじめ防止の一助になることが期待される。

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俳句を中心とした伝統的な言語文化の教科横断的・文化横断的な授業実践開発に関する研究 ―主体的な言語文化の担い手となる児童・生徒の育成を目指して― ※

高松 美紀(たかまつ みき)

東京都立国際高等学校 指導教諭

本研究は、伝統的な言語文化である俳句を取り上げ、児童・生徒が言語文化を単に継承するだけでなく、主体的に発展させ、新たな担い手となる自覚を育成する授業実践の開発を目的とする。本研究では、美術科との連携による教科横断的な創作活動、翻訳や外国語俳句を通した伝統的な言語文化のグローバル化の検討、日本語学習における俳句の導入、という三つの観点から、高校において実践研究と教材開発を行い、有効性と課題を検討した上で、小・中学校での応用を試みる。実践化においては、国際バカロレアの学力観や評価方法を参考にし、具体的かつ普及可能な学習活動を研究する。初等中等教育の一貫性や系統性を視野に入れながら、国際社会で求められる人材育成への方向性と可能性をもった具体的な実践開発を目指す。

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TiPSシート+タイムラプスで学習の振り返りをつぶやきから文脈へと導く研究 ※

谷本 薫彦(たにもと くにひこ)

岡山県津山市立津山西中学校 教諭

LINEやSNSを活用し、ツイートという形で「自分を発信」することに慣れている生徒たち。授業の最後に学習内容の振り返りを記述させると、授業や教師・教科書の言葉を引用しながら、それらしいことを書くことができる。その言葉は果たして「自分のことば」なのだろうか。同じ授業を受講しても、一人一人の感じ方、学び方は異なる。それは学びの土台が一人ずつ違うからである。その自分だけの学びを文脈で表現させることが可能になれば、学習内容をエピソード記憶として保存でき、学習の効果が向上すると考える。本研究では、文脈で振り返らせる具体的な方法の提供とその習慣化を図る。その結果、自分の学びのストーリーを客観的に捉え直し、学習内容につながる「自分のことば」による振り返りによって、より深い学習を実現できると考えている。

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生徒の学習行動の可視化による教師向け協調学習支援システムの開発と実践 ※

徳竹 圭太郎(とくたけ けいたろう)

東京工業大学環境社会理工学院社会人間科学コース 大学院生

本研究は,文部科学省が今後の学校教育の目標として示す「生徒の主体的・対話的で深い学び」を実現するため,協調学習における教師の発話の質を向上させることを目的として,生徒の協調的な学習の過程をリアルタイムで可視化して教師にフィードバックするシステムの開発を行う.また,本システムの使用前後で教師の発話を記録し,本システムの効果検証を行う.既存の協調学習では,作業に集中していない生徒など一部の層に教師の指導が集中する傾向にある.本システムを用いることで支援を必要とする生徒を教師が発見し,適切な発話・指導ができるようになると考える.本研究ではISM構造チャートを生徒に作成させる過程を通して教科内容を構造的に捉えさせることを授業目標とし,主に社会系教科において導入を検討している.

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外国につながる児童にとって難しい語をいかに説明するか―教室ですぐに使えるレファレンスの開発

中石 ゆうこ(なかいし ゆうこ)

県立広島大学総合教育センター 助教

学校教育の現場に日本語を母語としない児童生徒(以下、外国につながる児童)が増えている。その中には次第に授業について行きづらくなり、ドロップアウトしてしまう児童生徒も多い。外国につながる児童が十分に教育を受けられない問題は早急に解決が求められる。これまでに日本語教育の観点から、外国につながる児童が学習すべき日本語の語彙リストは数多く提供されている。しかしながら、その活用の仕方は現場任せになっているのが現状である。現場では、理解が難しい語があると小学生向けの国語辞書や母語の対訳辞書を引かせるという支援が一般的だが、日本生まれの児童生徒であっても、辞書の記述は意味がよく理解できないという場合も少なくない。そこで本研究では、外国につながる児童にとって、どのような説明が分かりやすいのかを言語の分析と調査を通して明らかにする。さらに、明らかになった説明の仕方を用いて、語彙リストの各語に説明を加え、教室ですぐに使えるレファレンス(用語集)にまとめる。

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知識の「やりくり」による思考力育成授業の開発 ※

中尾 尊洋(なかお たかひろ)

鳥取大学附属中学校 教諭

学習指導要領において「主体的・対話的で深い学び」が求められる中,知識を伝達して理解させる従来型授業では,汎用的な知識の獲得という点で限界がある。本研究では,既有の知識を構成して眼前の問題に対処し,解決へと導く力を「やりくりの力」と定義し,その育成を可能とする授業の方法を開発し,汎用的な知識の獲得を促す。そのために,複数教科において学習者が「やりくり」する授業の要素(教材,支援,学習展開)を,教師の経験的発想から引き出し,実践を展開する中から有効な方策を帰納的に明らかにする。学校現場での教師の経験的発想に理論的根拠を付加することによる,学習者の思考・判断・表現を育成する効果的かつ現実的な方法論を提案する。

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機械翻訳を介しての外国語と国語の横断的学習に関する研究

成田 潤也(なりた じゅんや)

厚木市立厚木第二小学校 教諭

高性能の機械翻訳が当たり前のインフラになる将来を見据え、外国語と国語の横断的教育の可能性を探る探究型の研究である。 ①機械翻訳技術の向上を前提にした場合、外国語教育が果たす教育的意義は何か。 ②その意義を満たすような、小学校外国語教育の指導内容とはどうあるべきか。 ③外国語教育と国語教育は、同じ言語の教育として相互に影響を及ぼすか。及ぼすとしたら、それは小学校段階においてはどのようなものか。 という3つの研究課題に取り組む。外国語(英語)と国語を横断的に指導し、俯瞰的な言語感覚を育成するような教育、及び、機械翻訳技術を適切に活用できるようにするための「機械翻訳使用マニュアル(試案)」を作成し、提案する。

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読み手の知識を反映した改訂版リーディングスキル・テストの開発 ※

荷方 邦夫(にかた くにお)

金沢美術工芸大学美術工芸学部一般教育等 准教授

リーディングスキルテスト開発と、その測定によって指摘された学校教育における読みのスキルついての問題は、社会的に広く知られるようになった。同時に、読み手の読解が統語的知識を反映しているかといった問題を指摘することができる。 本研究は文章理解・言語理解の観点から、中学生を対象としてスキルの測定における上記の問題を検討する。研究では、同一の文法構造をもつ文について、読み手となる生徒の背景知識に考慮し、読みの容易さが異なる文章を作成する。これを用いて、生徒のもつ背景知識の多寡が、スキルを左右するかについて実証する。 また、この調査で測定されたリーディングスキルが、実際の学力に関連することを検討する。調査では参加者の統語的スキルと学力の関連、あるいは読みにおける背景知識と学力の影響を検証する。

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対話的実践が児童の学力に与える影響~低学年における対話的実践の効果の検討~ ※

丹羽 さがの(にわ さがの)

東京家政学院大学現代生活学部児童学科 准教授

本研究の目的は,「小学校での対話的実践(アクティブ・ラーニング)」が,低学年児童の国語と算数の学力に与える影響について検討することである。児童の学力に影響すると考えられる「幼児教育・保育の特徴」(園での対話的実践と言語環境),「家庭環境」(蔵書量,子どもへの教育的関わり等)と,それらと学力の間にあって媒介要因となることが想定される「学習に関する意識」も共に取りあげ,これら諸要因と小学校での対話的実践,学力との関連を総合的に検討する。これにより,効果的な接続期カリキュラムやそれ以降の低学年児童にふさわしい指導の在り方について提言する。

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批判的思考力の育成を目指す算数授業の開発とその実践

服部 裕一郎(はっとり ゆういちろう)

批判的思考力の育成を目指す算数授業の開発とその実践

次期学習指導要領も公示され,ジェネリック・スキルとも呼ばれる「批判的思考力」はこれからの21世紀を担う子ども達に育成すべき「資質・能力」として,その重要性が高まっている。本研究は,小学校算数科に焦点をあて,子ども達の批判的思考力を育成する実践的な授業モデルを構築することを研究の目的とする。理論的基盤としては,Skovsmose氏が提唱する批判的数学教育(Skovsmose,1994)の視座に依拠しながら,方法的側面として「社会的オープンエンドな問題」(馬場,2009;島田,2017)に着目する。小学校算数科「データの活用」領域における教材の開発を行い,授業実践を通して,子ども達が示した批判的思考の具体を解明する。本研究課題の解明は,次期学習指導要領が目指す社会参加能力ベースのカリキュラム開発への貢献とその波及効果も期待できる。

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ききとり困難のある子どものための評価と支援が連続した評価手法の開発 ※

平林 ルミ(ひらばやし るみ)

東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野 特任助教

本研究は通常学級に在籍する発達障害の子どもの聴覚情報に関する教育的ニーズを明らかにし,聴覚情報処理の困難さをどうすれば補助できるのかを提案できる簡便なアセスメント開発を目指し,それに必要な小学生のききとりに関する標準データを取得することを目的とする。具体的には雑音低減と集音・音声情報の量とポーズの調整によってききとりのパフォーマンスが変化するかを明らかにする課題を作成し,その課題についての小学生の標準データを取得する。

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「考え議論する」道徳授業モデルの提案ー学校(道徳授業)・大学(教員養成)・教育委員会(教員研修)を対象として

藤澤 文(ふじさわ  あや)

鎌倉女子大学児童学部 准教授

今年度から道徳授業は心情読み取り重視型から「考え議論する道徳」へと転換されました。この授業を行うためには,これを担う学校(授業の実施),大学(教員養成,免許状更新講習),教育委員会(教員研修)の3組織が担うそれぞれの役割に対し同時にアプローチをする必要があると考えられます。そこで,本研究では,(1)園児~中学生の道徳授業を調査することにより,発達年齢に応じた考え議論することのできる道徳授業を検討し,(2)教職科目「道徳の指導法」(対教職学生)と教員研修「特別の教科道徳」(対現職教師)の中に「考え議論する道徳の教授法」の行い方の学び方を加えて検討します。以上の知見を併せ,実証的証拠に基づいた「考え議論する道徳授業を行うための協同モデル」を提案することを目的とします。

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幼稚園3年間における幼児の社会的調整の発達:幼児の他児の対人葛藤に対する介入行動の発達に着目して

松原 未季(まつばら みき)

奈良教育大学次世代教員養成センター 特任講師

本研究では、幼児の他児の喧嘩やいざこざなどの対人葛藤への介入行動の発達に着目し、幼児が幼稚園3間でいかに社会的調整を発達させるのかということを明らかにしたい。 具体的には、年齢別の幼児の介入行動の特徴を明らかにし、「幼稚園3年間における介入の発達」のモデル化を試みる。また、高度な介入を示す幼児への重点的観察や、年齢別の教師による幼児の対人葛藤場面への援助について分析することによって、効果的な介入が生じる要因について検討し、より精緻化した「介入モデル」を生成する。 さらに、現場の教師と、申請者が観察した幼児が他児の対人葛藤に介入した事例や、教師が葛藤に援助した事例を共有しながら、「介入の発達モデル」に関して意見交換を図ることによって、その妥当性を検討し、そのモデルをもとに幼児の発達に応じた援助の在り方を明らかにし、現場に提案することを志している。

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児童が抑制の能力を発揮し得る条件を探る:ADHD傾向との関連

宮坂 まみ(みやさか まみ)

環太平洋大学短期大学部人間発達学科子ども教育専攻 講師

注意欠如・多動症(ADHD)の症状の原因のひとつとして反応抑制不全が指摘されてきた。成功による報酬の獲得や失敗による報酬の損失などの介入によるモチベーションの向上は反応抑制を促進させる。しかし,報酬や損失は目的となる行動の発生に対して即座に与える必要があり,しかも児童にストレスを与えうるため,実際の教育場面での使用は難しいと考えられる。申請者はこれに代わる方法として,児童に目標を設定させることによるモチベーション向上を考えた。本研究では,目標設定がADHD傾向の高い児童が現在備えている反応抑制の能力を発揮させうる方法として機能するか否かを検討することを目的とする。目標設定による反応抑制促進効果を検証するとともにその効果に伴うストレスについて報酬の効果と比較検討し,目標設定の有効性を実証する。

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日本語と日本語話者の多様性に対する小学生の理解育成のための実践モデル構築

米本 和弘(よねもと かずひろ)

東京医科歯科大学統合国際機構 助教

本研究では,日本の小学生を対象に,日本の大学で学ぶ留学生との交流活動を通じて,日本語や日本語話者の中に存在する多様性に対する理解を育成,促進する方法について,実践モデルとしてまとめることを目的とする。大学の近隣の小学校2校の教員と協働で留学生との交流会を企画し,実践中に参与観察,実践後にインタビュー調査,アンケート調査行い,データを収集する。データは効果的に理解が育成,促進できていたかという観点から評価し,複数回の実践を行う中で修正を繰り返し,最終的に目標や活動,教師の役割,資料などを含めた実践モデルとして学会発表やウェブサイトなどで公開する計画である。また,ワークショップ形式で研修会も実施し,本研究の結果を広く還元,共有する。

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