博報賞

活動タイトル

在宅訪問教育対象児の豊かな生活の実現を目指す協働の取組み

荒木 良子

特別支援教育部門| キーワード:重度障害/重複障害/在宅訪問教育対象児福井県
荒木 良子

活動内容

訪問教育対象児の充実した生活を目指し、教師と看護師がお互いの専門性を認め合い、力を合わせた。
 対象児A児(以下A児)は進行性の難病であり、根本的な治療はなく対処療法が治療の中心である。危機的な状況を乗越えて10歳までの命といわれた年齢を超えた。小学校就学前に気管切開し、常時人工呼吸器装着、酸素24時間のフルサポート状態となり、在宅医療、在宅訪問教育を受けることとなった。担任は1年生から現在まで荒木1名。A児は日常交わされることばを理解し、自身は視線、仕草、表情、いくつかの身振りサイン、写真カードなどを発信に用いて会話を行うことができる。
 教師と看護師の訪問日時や回数はA児や家族の状況に応じて変化してきたが、概ねそれぞれ週三回、各二時間程度の訪問が実施されてきた。教師も看護師もそれぞれの仕事が開始された当初は自分の役割を果たすために懸命であった。しかし、訪問日程の調整など、母親の苦労を目の当たりにして、定期的に訪問する看護師と教師は直接顔を合わせて話ができる関係になるべきだと考えた。そこで1年生後半から学習会やカンファレンスの開催が始まった。
次にA児のコミュニケーションをテーマに通信を発行した。また相互の訪問を参観し、お互いの理解を深めるようにした。
 2年生になると家族のイベントに合わせて、看護師と教師が日時を合わせて訪問し、合同で仕事を行う合同訪問を実施した。3年生になると教師はコミュニケーションについて、看護師は医療面について「母の次の人」であると自負するようになり合同訪問を週1回定期化した。教育的にはA児が生命と生活のすべてを委ねる母親から、安心して離れることができる環境を整えて、A児の自立と社会性を高める取組みであり、看護師としては母親の定期的な外出や兄弟の学校行事への参加など家族の生活の質を高める取組みである。現在はすべての訪問教育を訪問看護と合同としている。情報の共有だけでなく、チームとして様々な状況に対応する力が、双方に育っている。

【写真】
教師の教材を用いて、看護師と活動を行う。



審査委員より

障害児教育に長年取り組み、一般の光を受けにくい在宅訪問教育・看護を受ける重度障害児に対して、障害児と保護者の生活全体を視野に入れた支援を実現するため、訪問看護師との積極的な連携のあり方を探求し、異なる専門性をチームとして融合した効果的な支援を実現した。特別支援教育に求められる異種専門職間の協働モデルとして高く評価できる。

プロフィール

福井県 荒木 良子(あらきよしこ)
役職:福井県立南越特別支援学校 教諭・特別支援教育コーディネーター