博報賞

活動タイトル

地域の自然を題材とした児童主体の課題解決学習の指導と実践

遠藤 晃

教育活性化部門| キーワード:探求的な学習/課題発見・解決能力/問題解決力宮崎県
遠藤 晃

活動内容

身近な自然の中に児童自身が「なぜ?」を見つけ、考え、解決し、まとめ、発表する指導法の標準化を目指す。
 天然記念物と同時に農作物を荒らす害獣でもあるケラマジカについて、地域住民のあいだで生じる保護と駆除の意見対立を緩和し、シカの持続的保全を目指すために、ESD(持続発展教育)の視点に立ち、2003年から沖縄県座間味村慶留間小学校の総合的な学習の時間に取組み始めた。
 学習のポイントは、ケラマジカを題材とした児童主体の探究学習を通して科学的リテラシーや課題解決能力を育み、地域の自然について客観的に理解するということにある。探究学習では多くの教員が課題設定の指導に悩んでいる。
慶留間小学校のケラマジカ研究は3、4年生の2年間をかけて行い、課題は子どもたち一人ひとりが決める。そのために森へ行き、シカの存在を示す痕跡を見つけることを繰返し、毎回の発見や「なぜ?」を記録に書き残す。ときに発表や対話を通して児童の中にある「なぜ?」を引出し、その蓄積を続けながら徐々に児童自身の課題を決めていく。課題設定までに非常に多くの時間を費やすことが本学習の指導方法の特徴である。課題が決まると児童自身がテーマに添った調査方法を考え、協力して実験・観察を行い、結果を考察してまとめていく。研究成果は毎年開催される沖縄生物学会で、大勢の専門家を前に子どもたちによって発表される。このように、児童主体の課題発見から表現までの一貫した課題解決学習の指導方法確立を慶留間小学校で授業を行いながら実践的に取組んでいる。
 こうした指導・実践は沖縄県から宮崎県へと波及・展開している。宮崎県の御池小学校では2011年からやはりシカを題材とした課題解決学習の実践を行い、霧島山周辺の6市町が主催する環境霧島会議で300名を超える聴衆を前にステージに立った児童によって、研究が堂々と発表された。また、より規模の大きな小学校では田んぼの生物を題材として児童主体の課題解決学習の授業実践・指導に教員とともに取組んでおり、いずれの取組みも短期間で児童の学ぶ姿勢に意欲や主体性がみられるなど大きな変化が報告されている。

【写真】
森の中を探険し自分だけの「なぜ?」を見つける児童たち



審査委員より

ニホンジカの大学研究者でありながら、長年にわたって教育に関心を抱き、問題解決的な学習の重要性を教育理念の核として、学校と連携して取り組んでこられた実績は極めてユニークであり、総合的な学習の時間の単元開発、ESD教育の実践事例としても高く評価することができる。今後のますますのご活躍を期待したい。

プロフィール

宮崎県 遠藤 晃(えんどうあきら)
役職:南九州大学 教授