博報賞

活動タイトル

地域と育む美術教育~ご当地題材開発とその実践研究~

田中 真二朗

教育活性化部門| キーワード:秋田県
田中 真二朗

活動内容

 過疎化、少子高齢化の進行に伴い、年々地域の活力が低下し、衰退化傾向にあった本地域。
 しかし、いつの時代も子どもは「地域の宝」「地域の希望」である。
 子どもたちが自分たちの生まれ育っているふるさとを盛り上げたいと願い、ふるさとを舞台にした活動を展開していけば、地域住民を元気づけられるであろうと考えた。
 そこで、中沖小学校区に住む小中学生による地域塾「中沖キッズ地域もりあげ隊」を結成し、郷土芸能「中沖棒踊り」の継承活動、地域活性化活動、地域貢 これまで「地域」や「ふるさと」にちなんだ題材を開発し取り組んできた。「美術を通して社会とどのように関わっていくのか」というテーマを掲げ、地域のマスコットキャラクターやドリンクデザイン、創作和菓子などを制作し、地域の方々と鑑賞しながらコミュニケーションをとり、地域の絆を深めたいと考えていた。3.11の震災以降、「地域」や「ふるさと」の概念は変わったように思う。私たちにとって「ふるさと」とは何なのか。今一度、「ふるさと」を見つめ、子どもから大人までその地域に暮らすみんなで、一人ひとりの本当の「ふるさと」を再発見する必要があると感じ、地域限定の美術展を開催した。子どものまなざしの先にある「ふるさと」の姿を大人が理解し、共感することで新たな地域像が見えてくるのではないか、子どもと大人の視点や思考がクロスオーバーすることによって地域の未来を探る、そんな機会にしたいと考え企画した展覧会である。 
 今回の一番の成果は、子どもの想いや願いを直接見て共感してもらう機会をつくれたことだと思う。多くの来場者が笑顔になって帰っていく姿、多くの地域の方々が「またやろう」と声をかけてくれたこと、そして出品した生徒の「またやりたい」という声。生徒の感想からは、人々の団結力や優しさを感じたり、様々な人の小さな力がたくさん集まると大きな力に変わることが分かったり、自分の住む地域に愛着が湧いたりと、美術室だけで完結する授業では感じることのできない感想を得ることができた。
 美術を通して学んだ地域の絆。まだ始まったばかりのアクションだが、これからもじっくりと続けていきたい実践である。子ども一人ひとりの豊かな感性を、美術教育を通して磨いていきながら自分たちの住む地域をよりよくしていくこと、地域とともによさや美しさを共感し合い、学び合うこと。幼・小・中・地域の連携を密にとり、発達段階に応じた美術的な力を身につけさせながら、社会とどう関わっていくのかを、これからも地域とともに考えていきたい。

【写真】
本展覧会の象徴作品・神岡希望の木を囲む小学生



審査委員より

外へ発信する美術教育論は革新的であり、それを具現する実践に情熱をもって取り組んでいる。それによって、子どもや地域の作家及び地域のもつよさが引き出されている。理念も企画も独創性があり、企画の実現には精力的である。これからの美術教育の推進者として期待できる。

プロフィール

秋田県 田中 真二朗(たなか しんじろう)
役 職:大仙市立平和中学校 教諭