博報賞

活動タイトル

通常の学級にいるLD・AD/HD等の発達障害のある中学生に対する教育の先進的取り組み

月森久江【文部科学大臣奨励賞受賞】

特別支援教育部門| キーワード:東京都
月森久江【文部科学大臣奨励賞受賞】

活動内容

 杉並区立中瀬中学校に設置されている通級指導学級「中瀬学級」は、地域の保護者が「中学校にも通級指導の学級を設置して欲しい」という篤い思いから、請願署名1,347名分を集め、1997年に開級された。私は、開級時に着任し「中瀬学級」担当として現在13年目を向かえている。
 開級した当時、区内の中学校(通常学級)の先生方は、「通級指導学級」について、ましてや発達障害については皆無といって良いほど知らなかった。学校や教師からのニーズが薄いということは、通級指導学級や発達障害がある生徒たちについての理解を広げていくうえでの大きな壁だった。そのため広く学級運営を知らせたり、在籍校へ出かけていって生徒理解を深めたり、毎年新たな試みを加えることで「発達障害がある生徒」への理解が広がるように活動してきた。「中瀬学級」の指導の特徴としては、見えているつまずきや困難に対して、学習能力や行動力を高めるための基礎的な力を養いつつ、発達障害に特化した指導を科学的根拠にもとづいて実践していることがあげられる。つまずきのある中学生に対する指導教材は、ほとんど市販されていないために、独自の教材作りも特徴といってよいだろう。発達障害がある中学生に対する先進的な取り組みを実践できてきた背景には、私が通常学級での勤務経験から健常発達について知識があること、30年前から学校教育相談やカウンセリングを勉強して校内支援体制を構築してきたこと、さらに20年ほど前からLD(学習障害)について勉強し、見た目では分からない発達障害に対して長年研究を深めてきたことによるものと考える。
 現在、通級を修了した75名の生徒たちは毎年開く同窓会には元気な姿を見せてくれている。一昨年、「中瀬学級親の会」を保護者と共に立ち上げ、現在会員数103名になり、保護者と共に地域に根ざした支援を模索し始めている。

【写真】
学年の異なる生徒が、意見交換しながら試行錯誤する「推論」の授業



審査委員より

LD、AD/HD、高機能自閉症など、いわゆる発達障害の「通級による指導」が全国的に広がってきた。特別支援教育のこうした展開のなか、長年にわたり中学校という現場から実践をリードし、指導モデルを創ってきた。その成果をさまざまな教材開発という形で具現化し、全国レベルでの研修指導にもあたってきており、今後も大いに期待されている。