コラム

Vol.11

by ひきたよしあき 2018.09.03

ネガティブなコトダマ

私は、しょっちゅう弱音を吐きます。

「もうダメだ。これ以上は無理だ」

と一日に何度考えることでしょう。

「面倒くさい!やりたくない!」

という言葉は、呼吸と同じ回数、
吐き出しています。

一時期、「ポジティブシンキング」という
考え方に触発されて、

「私は、やりとげられる人間だ!」

などという言葉を
朝晩、唱えたりもしました。しかし、
終わったとたん、

「あぁ、面倒くせぇ・・・」

という言葉がでてしまいます。

でも、こんな自分が好きになれる出来事が
ありました。

とある番組で映画監督が、しょっちゅう

「あぁ、面倒くさい!」

と叫んでいたのを見たからです。
監督の

「面倒くさいという自分の気持ちとの
戦いなんだ」

という言葉を聞いたとき、我が意を得たり!
と思いました。
私も監督同様に、「面倒くさい!」
と言っているときに手を動かしている。
書いたり働いたりしているのです。

よくよく考えると「面倒くさい」は私の
かけ声のようなのです。
単純に「ネガティブな言葉はダメ!」と
割り切れないところが、コトダマの面白さです。

上杉謙信はしょっちゅう
「あぁ、もう出家したい」
と弱音を吐いていました。

大久保利通は、パリに渡って
「私みたいな年寄りではもうダメじゃ」
と暗い気持ちになっていました。

リンカーンは、悪妻メアリーと
結婚するとき、
「地獄だ・・・」と嘆き、
かの一休和尚は、僧侶なのに
「死にとうない」とぼやいています。

偉人だから言葉も立派だったかと
言えばそうでもない。
むしろ、心の底にある言葉を
素直に外に吐き出せる人だからこそ、
決断や行動ができたのでしょう。

子どもたちからの手紙も
実にぼやきが多いです。
ネガティブな言葉も書かれています。

しかし、先生にほめられるような
優等生的自己肯定感で書かれた
手紙に比べ、骨太で、
大物感が漂います。

言葉を簡単に、いい悪い、肯定否定、
明るい暗いで二分してはいけません。

弱音を吐くことで、粘り強さが
身につくことも、決断力が増すことも
あるのです。

このコラムも、「面倒くせぇ!」と
幾度か叫びながら書きました。
そのせいか、もう次のコラムの
構想が頭の中に浮かんでいます。

実に面倒くさいことです。

  • ひきたよしあき プロフィール

    博報堂クリエイティブプロデューサー/スピーチライター
    早稲田大学卒業後、博報堂に入社。クリエイティブ局で、
    CMプランナー、クリエイティブ・ディレクターを経て現職。
    明治大学で教鞭をとるかたわら、朝日小学生新聞にコラムを連載、
    読者である子どもたちとの文通も行っている。
    facebookには年間約1000本のコラムを投稿し、幅広い世代から
    圧倒的な支持を得ている。
    2018年4月より、博報財団コミュニケーションコンサルタントとして
    の活動もスタート。
    著書に、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)
    「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」
    (かんき出版)他3冊。