コラム

Vol.27

by ひきたよしあき 2019.04.22

口のコトダマ

不思議に思いませんか?
アジアの人々は、マスクをしますが、
西洋の人はしませんよね。

そればかりではありません。
日本では、人に顔がバレないように
するために、目を隠します。
でも、西洋のギャングは、バンダナで
口を隠しますよね。

アメリカの大学で長く教えていた
友人にこの話をされたとき、
二人で銀座通りを歩いていました。

天気が良く、大勢の観光客がいます。
黒やピンクのマスクをしている人がいる。
振り返るときに聞こえていたのは
中国語でした。

アメリカだか、フランスだか、
あきらかに西洋の人もいます。
マスクをしている人は皆無でした。

「鼻が高いから邪魔なんじゃないの?」
「あっちは埃がすくないのでは?」

などと適当に答えていると、友人は
どれも違うという。

「実はね。アジア人は人を信用
するかしないかを、目で判断するんだ。
これに対して西洋の人は、口の動きを見る。
口の動き方を見れば、嘘をついているか
怖がっているかがわかるというんだ」

西洋人になったことがないので、
その気持ちはわかりません。
しかし、口の動かし方もまた目と同じように、
ものを言うのは確かなようです。

さて、数日後。

今度は、今年から高校生になる女の子二人と
そのお母さんたちとパーティに行きました。

ピカピカのJKたちといっしょに写真を撮る。
どう考えても、お母さんより、JKの方がかわいいのです。

「一体どうすれば、そんなにかわいい
顔を作れるの?」

とお母さん方が聞くと、

「まず、口の動きから覚えないとね」

と言いました。

みなさんもご存知でしょう。
「アヒル口」という唇を少しつきだした表情。
あれって、口角の上げ方と力の入れ方で
つくるのだそうです。

そのほかにも、一度「はぁ」という顔をして
「ふぅ」と息を抜くとかわいくなる。
唇に力をいれて「パッ!」という顔をすると
ちょっとアイドル雑誌の表紙のような顔になる。

実に多彩な技を教わりました。

しかもその大半が、口の動きです。
目はひとつもありませんでした。

大人たちが「チーズ!」といって
笑顔をつくる程度しか知らないのに、
彼女たちは、悲しい顔もうれしい顔も
口のかたちで表現している。

なるほどインスタグラムの時代になって
日本のティーンエージャーが
KAWAIIと言われるのは、西洋人が大好きな
口の動きを研究しつくしているから
ではないか。

彼女たちは、「言葉」ではなく、
「口のコトダマ」によって世界に
日本の若者文化を発信しているのです。

口の動かし方について、大人の私たちも
もう少し気をつけるべきでしょう。
来年は、東京オリンピック・パラリンピックです。
世界中から集まる人々に向けて、

「日本人は口元がすてき!」

と言われたらうれしいですよね。

  • ひきたよしあき プロフィール

    博報堂クリエイティブプロデューサー/スピーチライター
    早稲田大学卒業後、博報堂に入社。クリエイティブ局で、
    CMプランナー、クリエイティブ・ディレクターを経て現職。
    明治大学で教鞭をとるかたわら、朝日小学生新聞にコラムを連載、
    読者である子どもたちとの文通も行っている。
    facebookには年間約1000本のコラムを投稿し、幅広い世代から
    圧倒的な支持を得ている。
    2018年4月より、博報財団コミュニケーションコンサルタントとして
    の活動もスタート。
    著書に、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)
    「博報堂スピーチライターが教える短くても伝わる文章のコツ」
    (かんき出版)他3冊。